不動産 購入エリアの調査 その2 (主に投資用不動産)

購入予算が決まりましたら、次は具体的な調査に移ります。自宅購入の調査方法は通常以下になります。

https://www.realestate.com.au などの住宅売買サイトにお気に入りのサバーブ、購入条件を入力し、新着の通知があればOpen For Inspectionを見に行く。気に入れば購入交渉、Auctionで落札。

自宅を購入する場合は上記の方法で問題は無いと思いますが、購入前に今一度自分で購入しようとしているサバーブを客観的に検討するというのはいかがでしょうか? この章では主に投資用住宅のエリア調査について記載していますが、自宅購入用のサバーブ検討にもご参照ください。

以下の方法はVIC州に於いての投資用不動産の購入実例を記しています。記事の内容に依ってはVIC州と状況が違う場合もあります事をご了承ください。調査・検討方法については勿論その他の方法もあると思います。貴方の投資用(または自宅)不動産の購入に少しでもお役に立てば幸いです。

家にお買い得はない

スーパーマーケットなどでは、半額とか2割引きなどお買い得商品は多数ありますが、不動産に於いては「まずお買い得はないもの」とお考え下さい。もし狙っているエリアで一軒だけ周囲と比べて安い物件があれば「何か理由がある」とお考え下さい。例えば

  • 近所に高圧電線がある。
  • 土地形状がいびつ。
  • 基礎がシロアリにやられている。
  • 構造上問題がある。(雨漏り、ひび割れ、排水不備によるカビ等)
  • 何らかの理由により改築、増築ができない地域
  • 住む状態にするまで多額の費用が掛かる傷んだ家
  • 庭にある大きな木の根が家の基礎を破壊していても法令により木を切る事ができない地域
  • 空港の近くで2階建てが建てられない地域 等々

しかし、「住む状態にするまで多額の費用が掛かる傷んだ家」もカーペット、天井・壁のプラスターボード、ドアなどの表面的な問題のみの場合は、基礎さえしっかりしてれば、リノベーションで見違える程素敵な家になる事もあります。

不思議なことにVIC州で私が今まで見た不動産の広告の中で「心理的瑕疵あり物件」、いわゆる幽霊が出る物件の広告は見たことが無いです。(見たことがないのでどういう風に英語で表現されているかも分かりません)多分法令で表記責任が問われていないものと思います。

自宅用のエリアと賃貸用のエリアは違う(主に投資用不動産)

自分が賃貸住宅に住む事を考えてください。遠くの郊外とCity近郊どちらを選びますか? 大きな庭を選びますか? それとも利便性を選びますか?

郊外にある一軒家でも賃貸住宅(投資用不動産)にはなりますが、一度「空き家」になると次のテナントが見つかるまでに時間が掛かる=空き家期間が長いとローン支払いに困窮する事態になる場合があります。しかし場所にも依りますがCapital Growthを考えれば一般的に「家」の方が「アパート・ユニット」よりGrowthが高いというメリットもあります。事前によく検討し、「自分の家を買うのではなく投資用物件=賃貸物件を購入する」という事を今一度考えてください。

俗にいうAssetとCash Flowのジレンマです。

一般的に郊外の新興住宅地は「Home Owner」が多いエリアになります。もし新興住宅地に投資用不動産を購入するならばできる限り駅が近い、Shopping Centreが近いなど利便性を考慮し賃貸人に「入居し易い環境」の準備は必要です。

調査開始前に今一度自分の不動産投資スタイルを確認する(主に投資用不動産)

以前このブログでお伝えした「不動産 購入前の心構え (投資物件の場合)」の中で記載していますが、 調査開始前に今一度自分の不動産投資スタイル を確認してください。このスタイルの違いによってターゲットとするエリアが変わってきます。

(1) Capital Growth タイプ

不動産価値の上昇を主にした不動産投資のタイプ。このタイプの場合、「今後不動産価値が上昇するであろう」と思われる地域をいろいろな情報を元に推定し、エリアを絞ります。不動産価値の上昇が見込まれる要素は多数あると思いますが、私の今まで見聞きした中でのCapital Growthのあった地域の主要項目を記載します。(VIC州情報です)

  • 高速道路延長に伴う地価の上昇 (VIC州 Eastern Freeway延長に伴うRingwood等)
  • 線路の複線化 (VIC州 Melton South等)
  • Shopping Centreの大型化 (VIC州 Fountain Gate Shopping Centre)
  • 工業地帯だがCity近郊で見直されて地価上昇 (VIC州 Yarraville, Newport)
  • 昔のGovernment houseが多い地域が見直されて地価上昇(VIC州 Chadstone, Ashburton, Heidelberg West)
  • ラフな地域だったが海沿いなので見直されて地価上昇(VIC州 Frankston North)
  • ラフな地域だったがCityに近いので見直されて時価上昇(VIC州 St Kilda, Footscray)
  • 中華資本が入り地価上昇(VIC州 Box Hill, Glen Waverley)
  • ※ 特定のサバーブを誹謗しているわけではありません。

サバーブごとのデータを見れば過去の推移、近接したサバーブの価格も把握できます。データ、地図を詳細にみると「高いサバーブの隣にある比較的安いサバーブ」「Cityまでの距離が10Km~15Kmなのに他と比べて比較的安いサバーブ」等があります。そういったサバーブが今後Capital Growthが狙えるエリアだと考えます。また現在「ラフなエリア」は先ほどの例で示した通り、何年後かは時価上昇が狙えるエリアに変貌する可能性もあります。「ラフなエリア」は自宅には不向きですが、投資用と考えれば魅力的な今後のGrowthが狙えるポテンシャルの高いエリアの場合があります。

Capital Growthタイプは今入手できるデータを自分なりに分析し、仮説を立てて、自己資金を最大限に活用して投資用不動産を購入しますが、その購入が良かったのか、悪かったのかの結果が判明するのは5~10年後になります。いわば「当選発表が10年後の宝くじを購入する」ようなものです。Cash Flow / 節税タイプと比べ「目に見える金銭の増加」はありませんが、私的にはワクワクする投資と考えます。

(2) Cash Flow タイプ

不動産価値の上昇よりは安定した収入を主にした不動産投資のタイプ。このCash Flowタイプの方で「サービスアパートメント」または大学近くの「学生専用アパートメント」を購入する方もいます。補償された定額の収入および高い減価償却率が一般住宅・アパートと比べて良いのですが、やはりDisadvantageもあります。ここではDisadvantage についての詳細は述べませんが、購入を検討されている方は事前調査をしっかり行った方が良いと思います。特に「タイトル」「予想されるCapital Growth」については気を付けてください。

Cash flowタイプの不動産の購入を検討される方は、是非Capital GrowthとCash Flowの2つのシミュレーション予想を自分で想定し確認する事を推薦します。例えば以下は一例ですが

$500,000のCapital GrowthもしくはCash Flowタイプの投資物件を購入したと考える。

  • Capital Growth タイプ : 年間の収支は-$5,000の赤字。10年後に売却。売却益を$300,000とした場合、Netの儲けは$250,000.
  • Cash Flow タイプ:年間の収支は$5,000の黒字。10年後に売却。売却益は$100,000とした場合、Netの儲けは$150,000.

上記はあくまでもシミュレーションモデルの一例ですが、ありえないケースではないものとお考え下さい。予想家賃収入については購入検討エリアをhttps://www.realestate.com.au 「Rent」を見れば同じような家がリスティングされていると思いますので、それらの家から大体の家賃収入の予想が付くと思います。

予想家賃収入はご自分で調べる必要があります。Agentは「販売専用」と「賃貸専用」に分かれていますから「販売専用」のAgentに聞いても答えられないか適当な答えを言う場合があります。

(3) 節税タイプ

Negative Gearing (不動産に掛かった費用を一般の収入と合算して税金の支払いを減らす方法)を使用した投資方法で主にDepreciation(減価償却)で税金の払い戻しが多い「ほぼ新築」「新築」・「Off Plan] (VIC州では建物完成前の購入は建物費用を含まないLand costだけなのでStamp dutyが安くなる)の物件が主となります。この節税タイプの方でもDepreciation率が高い「サービスアパートメント」または大学近くの「学生専用アパートメント」を購入する方もいます。家ならば郊外の新興住宅地、アパートならばCity近郊に多数建築中です。

ここではDisadvantageについての詳細は述べませんが、以下に確認事項を記載します。ご検討ください。

  • Depreciationをした家を後程売却した場合、CGT(Capital Gain Tax)が多く掛かる可能性がある事を理解している。
  • 学生専用アパート、サービスアパートメントはOwnerでも住めない事を理解している。
  • 「新築のアパート」の在庫がだぶついている(供給過剰)可能性がある=Capital Growthが低い。新築アパートと中古アパートでは需要層が違います。特にHigh Rise Aprtmentは海外資本が購入している場合が多々あります。
  • Stamp DutyのSaving額と、住宅本来の周辺相場をよく考える。(Stamp DutyをSaveしたつもりが相場より高い値段で購入していないか?)
  • そのエリアの物件はCapital Growthがあるのか? 特にHigh Rise ApartmentはCapital Growthがあまり良くないと聞きます。 このサイト(<=クリック)で周辺の過去の売買歴を確認ください。参考に「Dockland」を見てください。
  • 最近は郊外でもアパートの建築が増えています。然しながら駅、商店の利便性を考慮していない場所に建っている物件も多々あります。税金のメリットだけではなく、テナントが住みたくなる場所かどうかも検討してください。
  • 新築は施工業者の技能不足による初期不具合(水漏れ、クラック、機器接続不具合、機器不具合)が発生する可能性があります。最終引き渡しの前に十分な検査を行う事をお勧めします。Property Inspectorという事でサーチできます。家の場合は「Framing=プラスターボード貼り付け前」の検査が重要です。プラスターボードが貼られてしまうとFrame構造体の検査は不可能です。
  • Depreciation(減価償却)を適正に行う為にはDepreciator, Quantity Surveyorという方たちに$500~$700程払ってDepreciation Schedule を作成してもらいます。(一回のみ)ネットでDepreciator, Quantity Surveyorは簡単に見つかります。Depreciation Schedule はTax Return時に使用し合法的に減税できます。

具体的なSurburb(街)の調査 (VIC州)

私はVIC州に居住しているのでVIC州内ならば、サバーブの名前を聞けば地理、雰囲気等が分かるのですが、他州になると全く分かりません。よって以下はVIC州における調査の参考としてください。同じ情報が他州にあるかと思い。調査しましたがなかなかVIC州のようにサバーブごとにvaluation 10年トレンドが一括して見られるデータは他州では見つけられませんでした。他州の若干の情報は見つけましたので参考に記します。

①サバーブごとのValuation10年トレンド ②直近のAuction Resultのデータがあれば、エリアの絞り込みは簡単にできます。

Victoria州

① VIC州政府が出している無料のサバーブごとのValuation データの最新版を入手してください。ページの最下段に発行日が記載されています。発行は9~10月頃の年一回の更新です。

Property sales statistics

② 以下にあります。「House][Unit][Vacant land]をダウンロードしてください。LandのローンはTax deductibleになりませんのでLandのデータは見たことがありません。

上記は2021年9月1日の最新版。前の年までのデータとなります。

③ データは「テキスト形式」になっていますので全データをドラッグしてすべてを数値化してください。ドラッグしてビックリマークを押します。参考に数値化のやり方リンクを以下に貼ります。

Excelで大量の数値変換が遅い時、一瞬で終わらせる方法
ドラッグしてビックリマークを押して数値化します。

④ データを数値化したら、Prelim(発行年)の前年データを利用してソートします。通常発行年は[Preliminary]なのでデータの信頼度があまり高くありませんので参考程度にしてください。

⑤ Preliminaryデータの前年を価格順でソートしたら、「予算範囲内」で購入できるサバーブが見えてきます。なおこのデータはValuation :評価額なので市場価格より10~20%程低く表示されています。ご自分の予算の若干低い範囲のサバーブを選択してください。

⑥ ⑤のデータを基準に右端にある(1)1年間のGrowth (2)10年間のGrowth (3)年間平均でソートして「次にGrowthがありそうなサバーブ」を探します。ここで注意したいのは「Country = 田舎」はそもそもサンプル数が少ないので数値の変動幅が大きいです。%のみにとらわれず全体の流れを把握してください。

⑦ サバーブがある程度絞れたらエクセルでTarget house listを作成し、以下の情報を使って「実際の売買価格を約50~100軒 2か月ほどモニター」します。そうすることにより「最新の本当の売買価格」を把握できるようになります。Inspectionに行って、その家が実際にいくらで売れたかが分かると肌で実勢価格が分かります。ただ100軒も見に行くと疲れるので時々くらいでいいかもしれません。

(1) https://www.realestate.com.au が発行している毎週のオークションの結果。メーリングリストに登録すれば毎週自動的に送付されます。

https://www.realestate.com.au/auction-results/vic

(2) 上記Auction resultで出ない場合はしばらくしてから以下のサイトで確認ください。このサイトは過去の販売額、レント額の記載もあるので先ほどのVIC州データの確認ができます。

Australia Home Sold Price, Property Sales Data, Victoria, New South Wales, Sydney, Canberra, Brisbane, Adelaide and Perth

⑧ 狙うサバーブは当初2~3か所に絞り、最終的には1か所に絞るのが効率的です。ネットでのOpen Inspectionもありますが、やはり家は実際に見て、触って、匂いを嗅いでみてみないと本当の家の状況、周辺環境が分からないと思います。実際に家を見に行くとなると、朝10時からお昼3時頃までのInspection timeに2,3サバーブを行ったり来たりするのは本当にエネルギーが必要です。

⑨ これだけやれば、狙っているサバーブの「おおよその売買価格」が分かるので交渉が有利になります。「いい家は適正な値段であっという間に売れます」。もうちょっと見てから、などと考えてると次に行った時は売却済になっている可能性があります。お気をつけください。

データの一例

NSW州

NSW州のデータを調べましたが以下の情報しか見つかりませんでした。ほかに良い情報をご存じの方いらっしゃりましたらご教授ください。

Home - Valuer General of New South Wales
Reports, summaries and trend analysis

個別の価格調査

Benchmark component report
property nsw online services

WA州

政府サイトですが有料のようです。

Property sales reports
Landgate suburb sales history details for rural and urban properties will help you make a sound decision when looking to buy, sell or invest in real estate.

このサイトは無料で結構使えるかもしれません。

Perth Property Market Data | WA House Prices, Sales & More
Get the latest data on the Perth Property & Real Estate Markets from REIWA. We have sales data, average house prices, listing numbers & more for Perth & WA.

QLD州

見つかりませんでした。

売主の気持ち

狙っていた家が急にAuction前に売れていたり、Offer出しても価格を吊り上げられたりして「なぜ?」「どうして?」と聞かれることがあります。はっきり言ってそれは「売主次第」なんです。

  • Aution前に急に売れる==>Auction前に販売終了するのは「Serious Bidderが期待できない場合が多いです。1人のSerious Bidderだけではセリにならないので事前交渉で高く売って販売完了する事があります。
  • Offer出しても価格を吊り上げられる==>Agentはプロです。多分貴方と少し話しただけで貴方が「カモネギ」かどうか分かります。「買いたい気持ち」=「もっと吊り上げれる」=「自分のコミッションが上がる」という図式です。
  • 「他にOfferがある。BestのOfferを出せないか?」==>本当の時もあるし、カマシの時もあります。状況次第です。Agentに「ある程度」正直に話しをしていると本当の話かどうか見え易いです。
  • 「Offerを出しても返事がない」==>Agentはだいたい[Offerをまとめて売主に提示」します。Offer一通づつだと効率がわるいし、なにより「最終的なOfferの比較」ができません。複数のOfferが届いた時点でAgentと売主は(1)offer価格 (2)Subject(条件) (3)Settlementを見て総合的に判断します。もし同価格ならばSubjectが少ない方が優先されるし、慌てて売る場合はSettlement が近い方が選ばれる可能性があります。この時点でOffer価格が同じ場合は「カモネギ」に話を持っていき値段を吊り上げます。
  • 「Auction 前の売主の心境」==>Agentは売主に毎週のOpen for Inspectionの進捗、serious bidderがいるかどうかを報告します。通常1週間めが一番見に来る客が多く、最後の方の3か4週間めに2度以上くる客がserious bidderになり、このあたりで「おおよその購入価格」を探ります。この時点でserious bidderがいなければ「事前商談」が始まります。買主も不安ですが売主も不安と思います。
  • 「Agentには正直に。しかしAgentは売主、そして自分の為に働く」 ==>これを勘違いする方がいますがAgentはあくまでも売主、自分自身の為に働きます。間違っても貴方の為に働いてくれる、とは思ってはいけません。また彼らは多数の物件を扱っているので「ひとつの物件にだらだらと時間を取る事」を嫌います。特に「予算をコロコロ変えて伝える」というのは避けた方が良いと思います。ある程度の信頼関係ができれば「この値段で売りそうだ」という事を教えてくれる場合があります。このあたりは結局「人と人との付き合い方」になります。

次章に続きます。

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